東京駅の駅舎はなぜ3階建てに戻された?復原工事の理由を解説
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第3話 / 全20話
戦後は2階建てだった東京駅丸の内駅舎。なぜ創建当時の3階建てに復原されたのでしょうか。保存・復原工事の背景や理由を分かりやすく解説します。
現在の東京駅丸の内駅舎は3階建てです。
しかし実は、戦後から2012年まで、およそ60年以上にわたって2階建てだったことをご存じでしょうか。
今の姿は、新しく建て直したものではありません。この記事では、東京駅が3階建てへ戻された理由を、分かりやすく紹介します。
結論:創建当時の姿へ戻すために復原された
先に答えをまとめます。
- 1914年(大正3年)の創建時、駅舎はもともと3階建てでした
- 1945年(昭和20年)の戦災で3階部分などを失い、戦後は2階建てとして復興されました
- 2003年(平成15年)の重要文化財指定によって歴史的価値が改めて認められ、保存・復原の方針がより明確になりました
つまり東京駅が3階建てである理由は、「増築した」のではなく「本来の姿を取り戻した」からです。
創建当時は3階建てだった
丸の内駅舎が開業したのは1914年(大正3年)12月20日です。
創建時の駅舎は地上3階建て。南北の端にはそれぞれドームが載り、南北に長く伸びる堂々とした外観でした。
戦後生まれの多くの人にとって、東京駅といえば2階建ての低い駅舎という印象だったはずです。しかし本来の設計は、より高さのある建物だったのです。
なぜ2階建てになったのか
1945年の戦災
1945年(昭和20年)、空襲によって駅舎は大きな被害を受けます。屋根、3階部分、そして南北のドームや内装が焼失しました。
レンガの壁は残りましたが、上部の構造は失われた状態でした。
1947年の復興工事
復旧工事が完了したのは1947年(昭和22年)です。
このとき、3階部分は再建されませんでした。2階建てに縮めたうえで屋根をかけ直し、ドームも創建時とは異なる八角形の屋根に改められています。
戦後の資材不足や社会状況の中で、早期の復旧を優先した工事でした。
そして結果として、この復興後の姿が60年以上にわたり使われ続けることになりました。
なぜ3階建てへ戻したのか
建て替え論と保存論
1970年代以降、丸の内駅舎については建て替えや高層化の構想がたびたび浮上します。老朽化への対応として建て替え案も検討されましたが、歴史的価値を評価する声が高まり、保存・復原の方向へ進みました。
1999年(平成11年)には、創建時の姿へ戻す計画が公表されます。
重要文化財としての価値
大きな後押しとなったのが2003年(平成15年)の重要文化財指定です。
鉄道史上の重要な建築であること、そして首都東京を代表する近代建築であることが、文化的な価値として認められました。
文化財として保存する以上、後の改修で変わった姿ではなく、本来の設計に基づく姿へ戻すという方針が明確になっていきます。
資料にもとづく検証
復原にあたっては、創建当時の図面や写真などの資料が集められ、専門家による委員会で検討が重ねられました。
工事は2007年春に着手し、2012年10月1日にグランドオープンを迎えます。同時に、地下に新たな躯体を設けて建物を地震から守る免震化も行われました。
「昔の姿に戻す」だけでなく、「これから先も使い続けられるようにする」工事でもあったわけです。
「復元」ではなく「復原」
この工事は「復元工事」ではなく「保存・復原工事」と呼ばれています。
読み方は同じ「ふくげん」ですが、文化財の世界では使い分けがあります。
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| 復原 | 現存する建物について、後の改造で変わった部分を元の姿へ戻すこと |
| 復元 | すでに失われたものを、資料をもとに新たに造り直すこと |
丸の内駅舎は、レンガの壁など創建時の部分が現に残っていました。ゼロから建て直したのではなく、残っていた建物を活かして元の姿へ戻したのです。
だからこそ「復原」という言葉が使われています。文字の違いに、この工事の性格が表れています。
なお、文化財分野では「復原」という表記が一般的ですが、一般の記事やニュースでは「復元」と表記されることもあります。検索する際に両方の表記を見かけても、同じ工事を指しています。
現地で見てみよう
復原の成果は、現地で意識して見るとよく分かります。
まずは駅前広場から駅舎全体を眺めてみてください。注目したいのは3階部分と、その上に載る南北のドームです。円形に近いドームの形は、戦後の八角形の屋根とは大きく異なります。
次に、ドームの真下へ入ってみましょう。丸の内北口・南口のドーム内部は、見上げると細部の装飾まで復原されています。
この工事には、新たに復原した部分がそれと分かるようにするという考え方が採られています(文化財保存の考え方によるものです)。古いものを新品同然に見せるのではなく、どこが当時から残る部分なのかを伝える姿勢です。壁面や天井をよく観察すると、質感の違いに気づけるはずです。
まとめ
最後に整理します。
- 東京駅が3階建てなのは、創建時の姿へ復原されたため
- 1914年の創建時から3階建てだった
- 1945年の戦災で3階部分を失い、1947年に2階建てとして復興された
- 2003年の重要文化財指定により歴史的価値が改めて認められ、保存・復原の方針が明確になった
- 2007年着工、2012年完成。免震化も同時に行われた
- 残る建物を元の姿へ戻す工事のため、「復元」ではなく「復原」と呼ばれる
今の東京駅は、100年前の設計と、現代の技術が重なった建物です。
第4話では「銀の鈴はなぜ『銀の鈴』なの?」を紹介します。
参考資料
- JR東日本「東京駅丸の内駅舎 保存・復原工事」
- 東京ステーションギャラリー
- 文化庁 国指定文化財等データベース/文化遺産オンライン
- 鉄道博物館
- 国立国会図書館デジタルコレクション
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