TOKYO STATION HISTORY WALK

知ると歩きたくなる東京駅|見どころ・歴史シリーズ

第7話 / 全10話 読了時間 約4分

東京駅から皇居へ続く行幸通りの歴史と見どころ

丸の内駅舎を正面から見せる、首都の都市軸です。

東京駅丸の内駅舎の中央から皇居方面を見ると、幅の広い道路が一直線に延びています。これが「行幸通り(ぎょうこうどおり)」です。東京駅と皇居方面を結ぶ儀礼的な道路であると同時に、丸の内駅舎を正面から見せる都市景観の軸でもあります。

単なる散歩道ではなく、東京駅の成り立ちと深く結びついた場所です。この記事では、行幸通りの正式名称や、なぜこの位置に造られたのか、そして現地で注目したい見どころを紹介します。

この記事で分かること

  • 行幸通りの正式名称と、東京駅丸の内駅前広場との違い
  • 震災復興で1926年に整備され、2010年・2017年に再整備された経緯
  • 駅舎中央部を正面から見る眺めや、中央帯・イチョウ並木などの見どころ

行幸通りはどこからどこまで?

行幸通りは、東京駅丸の内駅前広場の皇居側から、内堀通り・和田倉門交差点方面へ延びる道路です。正式名称は「東京都道404号皇居前東京停車場線」。東京駅側の丸の内区間は幅員約73mあり、2010年に再整備された区間は約190mです。さらに皇居側へ進むと、内堀通り・和田倉門交差点方面につながります。都心の道路としては、かなりの幅の広さです。

ここで整理しておきたいのは、行幸通りと東京駅丸の内駅前広場は別の場所だという点です。駅舎のすぐ前に整備された広場が「丸の内駅前広場」で、そこから皇居方面へ延びる道路が「行幸通り」です。行幸通りは内堀通りの手前までで、皇居の中まで続いているわけではありません。屋外の道路なので、歩くだけなら料金はかかりません。東京駅丸の内駅前広場から内堀通り・和田倉門交差点付近までは、徒歩でおおむね5〜10分が目安です。景観を見ながら往復するなら、20〜30分程度を見込むとよいでしょう。

行幸通りのイチョウ並木と東京駅丸の内駅舎
行幸通りのイチョウ並木は、秋には黄葉し、赤レンガの丸の内駅舎との対比が楽しめます。見頃は年によって前後します。

なぜ東京駅と皇居を結ぶ位置に造られた?

東京駅は1914年、首都の中央停車場として開業しました。駅舎中央部と皇居方面を向き合わせる軸線は、東京駅と丸の内地区の計画段階から意識されていたものです。

現在の行幸通りの基礎となる幅の広い道路は、1923年(大正12年)の関東大震災の後、帝都復興事業によって本格的に整備され、1926年(大正15年)に完成しました。東京駅の開業から約12年後のことです。つまり行幸通りは、震災後に突然構想されたのではなく、もともと意識されていた東京駅と皇居方面を結ぶ軸線が、震災復興を機に幅の広い道路として形になったものだと言えます。

「行幸」とは、天皇が外出することを意味します。読み方は「ぎょうこう」です。行幸通りは、東京駅と皇居方面を結ぶ首都の象徴的な道路として整備されました。一般の道路である一方、皇室の行幸や外国大使の信任状捧呈式など、儀礼的な通行にも使われてきました。東京駅丸の内駅舎はもともと、皇居と向き合う「中央停車場」として計画された建物で、駅舎中央部には皇室用の玄関や御車寄せが設けられています。東京駅中央部と行幸通り、そして和田倉門・皇居外苑方面が、一本の都市軸の上に並んでいるのです。

丸の内駅舎の「中央部」を正面から見る

東京駅丸の内駅舎というと、南北両端のドームに注目が集まりがちです。しかし行幸通りの軸線上からは、駅舎の中央部が正面に見えます。駅舎全長の中央にあたる部分で、行幸通りの軸線上にあるのは、一般利用者が日常的に使う丸の内中央口とは別の、駅舎中央部の皇室用玄関と御車寄せです。

行幸通りから駅舎を振り返ると、南北のドームが左右に配置され、その中心に駅舎中央部があることが分かります。ドームだけを近くで見るのとは違った、駅舎全体の設計意図が伝わる眺めです。御車寄せなど皇室用の設備は一般利用できないため、立入可能な歩行者空間から駅舎全体を眺めてください。

行幸通り側から正面に見た東京駅丸の内駅舎中央部と南北ドーム
行幸通り側から振り返ると、駅舎中央部が軸線上にあり、その左右に南北のドームが配置されていることが分かります。

なぜ道路の中央が広いのか

行幸通りの中央には、幅の広い空間があります。もともとこの中央部は、皇室の行幸や、外国大使が皇居へ向かう際の通行に使われる、儀礼的な道路として整備されました。左右にある車道とは役割が分けられていたのです。

ただし、中央が広い理由を一つに単純化することはできません。皇室行事や儀礼的な通行のためであると同時に、東京駅と皇居方面を結ぶ格式ある都市景観をつくるためでもありました。2010年の再整備では、中央帯に石張りの歩行者空間が設けられました。通常時は歩行者が利用できますが、皇室公式行事や信任状捧呈式の馬車列が通行する際には、儀礼用の経路として使用されます。

東京駅側の行幸通りは2008年から再整備され、2010年3月に完成しました。かつて儀礼時を中心に使われていた中央帯には歩行者空間が設けられ、通常時には一般の人も歩けるようになりました。その後、2017年には東京駅丸の内駅前広場と、行幸通りの皇居外苑側の整備も完成しています。現在見られる、駅前広場から行幸通りへ連続する景観は、歴史的な軸線を生かしながら近年再整備されたものです。東京駅開業時から今と同じ姿だったわけではありません。

信任状捧呈式の馬車列

行幸通りに関連してよく知られているのが、外国大使の信任状捧呈式です。新しく着任した外国大使が、天皇に信任状を捧げる儀式で、その送迎には、大使の希望により、皇室用の自動車または馬車が提供されます。馬車列が運行される場合は、東京駅から行幸通り、和田倉門交差点、皇居外苑を経て皇居へ向かいます。

ただし、これは毎日見られるものではありません。実施の有無や日程は大使の着任状況によって決まります。馬車列の運行予定が公表される場合もありますが、行幸通りの歩道で立ち止まると通行の妨げになります。見学場所や撮影上の注意は、宮内庁の最新案内に従ってください。フラッシュ撮影や馬車との併走は避ける必要があります。

イチョウ並木と季節の景観

行幸通りの中央の歩行者空間には石材舗装が用いられ、左右には復元された4列のイチョウ並木が続きます。広い幅員、舗装、植栽、街路灯が一体となって、東京駅と皇居方面を結ぶ軸線を強調しています。イチョウ並木は写真映えするだけでなく、この幅の広い道路の景観を引き締める要素にもなっています。

秋になると黄葉し、東京駅の赤レンガ駅舎と黄色い並木を一緒に眺められる時期があります。黄葉の見頃はおおむね晩秋ですが、その年の気候によって前後します。特定の日を狙うより、11月下旬から12月上旬ごろを目安に、現地の状況を見て訪れるとよいでしょう。周辺では年末に期間限定のイルミネーションやイベントが開催される年もあります。実施内容は毎年異なるため、訪問前に最新情報を確認してください。撮影の際は、車道もある道路であることを忘れず、交通と周囲の通行に注意してください。

行幸通りのイチョウ並木は、秋には黄葉し、赤レンガの丸の内駅舎との対比が楽しめます。見頃は年によって前後します。

地下にもある「行幸地下ギャラリー」

行幸通りの地下には、東京駅側と丸の内・大手町方面の地下歩行者ネットワークを結ぶ行幸地下通路があります。1960年に整備された地下駐車場の一部を歩行者通路へ転用したもので、2007年に完成しました。その一部は「行幸地下ギャラリー」として展示にも使われています。雨の日でも、東京駅から丸の内・大手町方面へ移動できます。地上の行幸通りが儀礼と景観の道であるのに対し、地下は日常の移動に便利な通路、という違いがあります。

現地ではここを見てみよう

  1. 東京駅丸の内側に出て、行幸通りの軸線上から皇居方面を見渡してみましょう。一直線に延びる幅の広い道路が実感できます。
  2. 反対に振り返って、丸の内駅舎の中央部と、左右のドームのバランスを眺めてみましょう。
  3. 中央帯の歩行者空間と、左右の車道の役割の違いに注目してみましょう。通常時に歩行者空間が開放されていれば、立入可能な範囲から軸線を確認できます。
  4. 左右のイチョウ並木と石材舗装を、季節に合わせて眺めてみましょう。
  5. 雨天時や移動には、地下の行幸地下ギャラリーも利用できます。
見学・散策の目安

場所:東京駅丸の内駅前広場〜内堀通り・和田倉門交差点方面/料金:無料(屋外の道路)/所要時間:東京駅丸の内駅前広場から内堀通り手前まで、徒歩でおおむね5〜10分。駅舎の眺めや写真を楽しむなら20〜30分程度/おすすめの人:東京駅の建築や都市計画、写真撮影に興味がある人/注意:車道もある道路です。皇室公式行事や信任状捧呈式、イベント時には、中央帯の歩行者空間の通行が制限されることがあります。最新の状況は現地の案内でご確認ください。

まとめ

行幸通りは、東京駅丸の内駅前広場から内堀通り・和田倉門方面へ延びる、東京都道404号皇居前東京停車場線です。関東大震災後の帝都復興事業で1926年に整備され、2010年と2017年の再整備を経て、現在の景観が形づくられました。東京駅と皇居方面を結ぶ都市軸であり、皇室行事や信任状捧呈式に使われる儀礼の道でもあります。行幸通りから駅舎中央部を振り返ると、南北ドームだけでは分からない丸の内駅舎全体の設計が見えてきます。次回は、東京駅で見つけられるレンガ、柱、レリーフなど、建築の細かな見どころを紹介します。

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